と云うわけで木挽きさんに依頼しました。
 
 木挽き職人は林 以一(はやし いいち)氏です。
 現在では、大鋸(おおが)を使う木挽きは、全国でも十指に満たなくなったと言われています。その中でも林氏は、木の性質を見抜き、最も効率よくいい目が出るような木取りのできる数少ない職人として知られています。

 氏は昭和4年千葉県出身で、「日本最後の木挽き」と呼ばれていましたが、数年前に若者が弟子入り。木挽きの技術はかろうじて命脈を保ちました。今回も林氏と弟子の二人で二日間で挽きました。

 木挽きというのは、丸太を柱や板などの木材に切っていく仕事です。使う道具は、大鋸(おが)と呼ばれる巨大なノコギリひとつです。客の注文に応じて大黒柱も天井板も床板も、あらゆる木材を切り出す"木のプロ"なんです。

 製材機で挽くと、大量の削りかすが出たり機械の熱で木の中の油が溶けだして、木肌が汚くなるそうです。木挽きが挽くと木目もきれいに出ます。現に勘兵衛さんは「木挽きさんが挽くとカンナのかかりもいいんだっ」と云ってます。

 実際に木挽きさんが挽く手順に触れてみます。
先ず、杉を横に寝かせてありますが、安定させるために他の木材等で固定します。次に墨つけですが、その前にチョウナ又は斧で墨つけする部分の皮を剥いでいきます。(下の写真)

参考文献:1993年 浦安市教育委員会発行「浦安のベカ舟」
大工道具の写真は浦安市郷土博物館より借用

 <舟の材料である杉の話し>
 1999年に浦安舟大工技術保存会が入手した杉は、千葉県印旛郡印旛村の印旛沼の北部で伐採したもので、樹齢200年以上のものでした。杉の持ち主は山林の大地主(オオヤマモチ)です。この大地主は「山師」を雇っています。山師の話は前号で触れています。彼が大地主の山林を管理しているんですね。

 何回か通って売買の了解を得、伐採の現場にも立ち会いました。
 木の太さはどのように表現するかご存じですか?
 自分が木の側に立った目の高さをメドオリ(またはメドリ)と呼びます。5尺木・6尺木といわれ、メドオリで円周が5尺ある木を5尺木、6尺ある木を6尺木という。浦安舟大工技術保存会が入手した杉はメドオリで一丈でした。一丈が十尺で、一尺が33.3センチだから、一丈は333センチ、つまり3.33米でした。

 木の伐り出し(伐りどき)は秋の10月〜11月頃がよいと云われています。5月から6月頃は木が水を吸い上げる時期で、伐りどきが悪いと云い、なるべくこの時期は伐採しないようにしています。我々も11月に伐採しました。

 高さ20m、メドオリ333cmの杉の伐採の方法は想像出来ますか?
一般的に伐採はチェンソーで横に切断していき、クサビなど打ち込んで
伐採するんですね。
驚きました!たった10分で伐採完了です。
何とブルドーザーで倒してしまうんです。倒す方向の地面を掘り、反対側からブルで倒すんです。アッという間のアッと云う驚きでした。もちろん、ブルドーザーが入れる環境が前提です。

 倒してから10m程度の長さにチェンソーで切断します。更に枝などを切り落とします。これでトレーラーに乗せられる長さになりました。大きな「根っ子」も持ち帰りました。

 さて、持ち帰りましたが製材が必要です。私の知り合いの新木場の製材所の社長に見ていただきました。

社長「これは〜、ダメだっ」
私「えっ、何がダメです?」
社長「大きすぎる(太すぎる)!」
私「どういうことです?」
社長「新木場の製材所でこの太さの杉を製材するところはありません」
私「え〜っ、どうすればいいんですか?」
社長「この太さの製材可能な製材所は甲府にあります。その前にこれを
二つに裁断しなければなりません」
私「どうするんですか?」
社長「新木場に木挽きさんがいますから、先ず彼に頼んでみましょう」

 となったわけです。

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浦安舟大工技術保存会 P11 

皮をむいた後墨つけをします。(右の写真)