浦安舟大工技術保存会 P15 

 Aべかの語源
民俗学者の桜田勝徳氏は船の名のつけ方を
  1.主な積荷の名からつげられましたもの(石炭船・薪木船など)
  2.主な漁獲物の名からつげられましたもの(イワシ船・カツオ船など)
  3.操業する漁業の名からつけられましたもの(釣船・網船など)
  4.地名からつけられましたもの(土佐船・明石船など)
  5.船の構造・形・造船の仕方などからつけたと思われるもの(マルキブ
   ネ・マルタなど)
  6.船の蟻装の仕方からつけられましたもの(ホンカキ・コモブネなど)
  7.主として活躍する季節からつげられましたもの(サツキブネ・アキブネ
   など)
  8.用途からつけられましたもの(山行き舟・磯見舟など)
  9.動力船を示すもの(チャカ・ポッポセンなど)
 10.無動力船を示すもの(一丁漕ぎ・手漕ぎなど)
 11.意味不明(べか・ニタリなど)
の11項目に分類しました。
 桜田勝徳氏によると、べかは意味不明な船名としていますが、語源としていくつかいわれがありますので紹介しておきましょう。

◆べか舟を手で強く押すと「ぺこぺこ」するところから「ぺこ」という呼び名
 が生まれ、次第に詑って「べか」と呼ぶようになった。
◆「ぶっくれ舟」という呼び名が縮められてべか舟になった。
◆船板の極端に薄いペカペカ光る船が登場し、それがべかと呼ぱれるよ
 うになった。
◆一番小さい船との意味の「部下船(ブカブネ)」をべか舟と呼びはじめた。
◆利根川水系の「部賀船」は、地名からつけられました。栃木県下都賀郡
 藤岡町部屋の部と都賀の賀をとったことに由来する。
 
 とまあ、べか舟の名前の由来ははっきりしていないようです。でもなんとなく・・べか舟って感じですね。


 ところで今まで舟大工の話しとか道具とか杉材の話しをしてきました。肝心の「べか舟」の話しはあまりしてきませんでした。
本HPの「青べか紀行」でも触れておりません。

 
 ここで浦安市教育委員会発行の「浦安のべか舟」から引用しながらべか舟について触れてみようと思います。

 浦安市のシンボル的存在となっているベカ舟。昭和46年の漁業権全面放棄後、千数百艘あったベカ舟は次々と姿を消し、今日では数艘が確認できるだけとなっていましました。
 平成4年度に浦安市教育委員会と(財)浦安市施設利用振興公杜の主催で、浦安市郷土資料館企画展「郷土の船大工復活"あのベカ舟が帰ってきた"」が開催され、20年ぶりにベカ舟が新造されました。同時に、(株)スーパーネットワークユー(現J−com)による映像記録も行われました。
 ところで「浦安のべか舟」はベカ舟の製作過程を記録するとともに、浦安のベカ舟に関する資料をまとめたものです。

@べか舟とは
 べか舟とは、浦安をはじめ東京湾全域にみられた1人乗りの海苔採取用の小型船のことです。海苔採取用に改良された特殊船で、浦安ではシキと呼ぶ船底板にタナ(棚)と呼ぶ側板、および船首のミオシ(ミヨシ)と船尾のトダテの各部材をはぎ合わせ、フナバリで補強した構造となっています。
 タナは二枚棚(側が上下2枚の板ではぎ合わせてある構造)で、下部のシキに接続する板をカジキ、上部の板をウワダナと呼んでいます。このべか舟に乗って海苔柵(間隔は4尺)の間に入って作業が行われました。なお、浦安を舞台にした小説『青べか物語』(山本周五郎著)の中では「べか舟というのは一人乗りの平底舟で、多く貝や海苔採りに使われ、笹の葉のような軽快なかたちをしてい、小さいながら中央に帆桁もあって、小さな三角帆を張ることができた」と記してあります。構造については後述します。

 ほかの辞典類ではべか舟を次のように記載しています。まず小学館の『日本国語大辞典第十七巻』では・・

a.薄い板で作った、軽量で簡単な構造の小船。東京湾の海苔採取用の一枚棚の海苔べかはその典型だが、東海や北陸界隈にもあって、船型・構造にそれぞれ地方的特色がある。

b.川船のうち、特に浅瀬で用いる、軽量で簡素な薄板造の一枚棚の船。利根川上流の巴波川・渡良瀬川・思川などの水運に用いたものは上口長さ約四五尺(約一三・六メートル)、幅九尺(約二・七メートル)に及んだ」
とあります。ここでは、海苔採取用のべか舟を一枚棚(側板が1枚でできている構造)としていますが、調査した限りでは、浦安近辺のべか舟はすべて二枚棚であった。

 また『国史大辞典第十二巻』では「部賀船」として、「軽量化のため薄板構造で作られた簡素な船の汎称。用途・地域により船型・大きさを異にし、たとえば江戸湾の磯船や海苔採取用に使われた一枚棚の小船がある一方、利根川支流水系の浅い河川水運で主用された川船には、長さ四十五尺(一三・六メートル)、幅九尺というべか船としては最大級のものもある。後者は薄板構造の大型船のため船底材と一枚棚の舷側板にはマツラと呼ぶ肋材を入れて補強している。この点は利根川本流の大型川船の高瀬船と基本的には同じだが、船型・構造はぐっと簡素になっている。」と記されています。

 以上のことから同じべか舟でも地域により様々な形があったことがわかります。ここでは浦安で使用されていたべか舟について記します。
 

参考文献:1993年 浦安市教育委員会発行「浦安のベカ舟」

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浦安舟大工技術保存会で製作したべか舟です。郷土博物館で乗船することもできます。

http://www.ken-ohashi.com/aobekaa.html